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Far Cry / The More Things Change ... (ファー・クライ) (1980年) - アルバム・レビュー

2020年04月19日
AOR名盤(1980年) 2
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Far Cryの1980年のアルバム『The More Things Change ... / ファー・クライ』の紹介です。
Far Cry / The More Things Change ... (ファー・クライ) (1980年)
Far Cryは、Phil GaldstonとPeter Thomという二人のソングライターによるユニット。Phil GaldstonはN.Y.生まれ。書いた曲の中ではVanessa Williamsの歌で全米1位になった「Save the Best for Last」(92年)が一番有名だが、他にもCeline Dionを始めとする多くのアーティストにヒット曲を提供している。一方のPeter Thomはスコットランド生まれ。幼少期にカナダに移住して60年代から音楽活動を始め、72年には唯一のソロ・アルバム『Peter Thom』を残している。この『The More Things Change ...』は、Far Cryの唯一のアルバム。

Peter ThomとPhil Galdstonの二人には、これより前にも "Galdston & Thom" 名義の77年のアルバム『』がある。二人の出世作になった「Why Don't We Live Together」を収録したアルバムだ。この曲は75年のアメリカン・ソング・フェスティバルの最優秀賞に輝き、その年のBarry Manilowのアルバム『』に取り上げられた。というワケで、今日紹介する『ファー・クライ』は二人にとって2作目ということになる。

このアルバムは "Steely Danの関連作品" として、マイナーでありながら根強い人気をもつ。プロデュースを手がけたのは、Steely Danの後期のアルバムのエンジニアを担当したElliot Scheinerであり、77年の名作『Aja』や80年の『Gaucho』に関わったミュージシャンの多くが参加しているからだ。その中にはDonald Fagenもいる。Fagenは、「The Hits Just Keep On Comin'」「It's Not As Simple As That」「Some Things Will Never Change」の3曲でバック・ヴォーカルを担当した。

さて、この中からおすすめの4曲を紹介。

まずは、1曲目の「The Hits Just Keep On Comin'」。この曲には、Donald Fagenがバック・ヴォーカルで参加したほか、Rob Mounsey(p), Steve Khan(g), Ralph MacDonald(per)の "Gaucho組" が参加している。また、Billy Joelのバンド・メンバーのDoug Stegmeyer(b)とLiberty DeVitto(ds)も参加。Billy Joelなどのプロデュースで知られるPhil Ramoneが本作のエグゼクティヴ・プロデューサーを担当しているので、二人はその縁での参加だろう。メロディとハーモニーにウェストコースト風の心地よい開放感がありながら、サウンドは上品に整えられている。

そして、2曲目の「Eldorado Escape」。ここでは、Bernard Purdie(ds)のシャッフル・ビートを聴くことができる。Purdieはこの1曲のみに参加。Rob Mounsey(sy)とFrank Floyd(bv)のGaucho組に加え、ベースはWill Leeが担当した。Mark Doyleの乾いたギター・ソロにもいい味がある。洗練された演奏と緊張感のある音作りはSteely Danのアルバムに近い風合いがあって、本家の熱心なファンも満足するクオリティでは。

"With your love, I was the champion / Now I'm down for the count / Here he is the one and lonely one" と歌う「The One And Lonely」は優しくも切ないラヴ・ソング。短いソロ・パートでは、Rob Mounseyのシンセの音が美しく響く。ドラムスを演奏するChris Parkerは他にも3曲を担当。Steely Danのアルバムに参加したことはないが、Donald Fagenのソロ・アルバム『Kamakiriad』(93年)に参加している。

「It's Not As Simple As That」もSteely Dan度数の高い曲。Donald Fagenのバック・ヴォーカルが一番良く聴こえるのもこの曲だ。クールなホーン使いや、後半からエンディングにかけてフェード・アウトしていくElliot Randallのギター・ソロがとてもいい味を出している。Elliot RandallはSteely Danのデビュー作を始め、レコーディングには度々呼ばれるギターの名手だ。

アルバム・タイトルの "The More Things Change ..." (変われば変わるほど ...) に対して、ラスト・ナンバーの「Some Things Will Never Change」は、"決して変わらないものがある" と締めくくる。このあたりのウィットもSteely Dan風。ここでは、『Aja』『Gaucho』『The Nightfly』の全てに参加しているSteve Khanが渋いギター・ソロを弾いている。

●収録曲
1. The Hits Just Keep On Comin' - 4:01
2. Eldorado Escape - 4:05
3. The One And Lonely - 3:40
4. Because It's There - 4:03
5. It's Not As Simple As That - 3:34
6. Fight, Fight, Fight - 3:05
7. Ocean Eyes - 3:16
8. Suddenly Strings - 4:37
9. Tell Jack - 3:57
10. Some Things Will Never Change - 5:00


◆プロデュース: Elliot Scheiner

◆参加ミュージシャン: Peter Thom(vo), Phil Galdston(vo, k)
with Steve Khan/Elliot Randoll/Jeff Mironov(g), Rob Mounsey(k, bv), Will Lee/Doug Stegmeyer/Tony Levin/Neil Jason(b), Bernard Purdie/Chris Parker/Liberty DeVitto/Ed Greene(ds), Ralph MacDonald(per), Donald Fagen/Patti Austin(bv), etc


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Warm Breeze
この記事を書いた人: Warm Breeze
70年代、80年代の洋楽やAORを中心に、心の栄養と生活の潤いを与えてくれる素敵な音楽を紹介します。どちらかというと埋もれている名作を紹介したいという気持ちが強いです。

コメント2件

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240

名盤ですね

こんばんは。
私もコレ、1000シリーズで購入しました。AOR名盤紹介本では必ず本作がアップされてますが、その理由、よく分かります。全曲、名曲!個人的にはバラードの「Suddenly Strings」とか、クールなAORの「Because It's There」、トップの「The Hits Just Keep on Comin'」でしょうか。
あ、27日にポール・マッカートニーのライブに行きましたが、素晴らしかったですよ!

2017年04月29日 (土) 00:45

Warm Breeze

Re: 名盤ですね

240さん、こんにちは。

昨晩は生ポールを堪能されたんですね。羨ましいです。
私はニュース等で元気な姿を拝むだけですが、74歳とは思えない溌剌としたオーラがあり、凄いなぁと思います。

240さんのFar Cryの記事、拝見しました。
確かに、エリオット・シャイナーがエンジニアを務めたアルバムって、どれも良いですよね。外れがないという安心感があります。

2017年04月29日 (土) 11:12