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James Taylor / Dad Loves His Work (1981年) - アルバム・レビュー

2020年04月26日
AOR名盤(1981年) 0
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、James Taylorの1981年のアルバム『Dad Loves His Work / ダディーズ・スマイル』の紹介です。
James Taylor / Dad Loves His Work (ダディーズ・スマイル) (1981年)
James Taylorはアメリカを代表するシンガー・ソングライターの一人。60年代の終わりから現在に至るまで "マイペース" という感じで音楽活動を続け、優れたアルバムを地道に作り続けている。

繊細な心情を穏やかなメロディと柔らかいアコースティック・サウンドに乗せて歌う曲が多く、その優しい歌声にはロマンティックな響きがある。背が高くて顔立ちもハンサム。同業のCarly Simon(72年~83年)や女優のKathryn Walker(85年~95年)など、私生活では3度の結婚を経験している。

今日紹介する『Dad Loves His Work』は通算10作目となるスタジオ・アルバム。

Carly Simonとの結婚生活は10年近くになり、娘のSallyは7歳、息子のBenは4歳になっている。多忙なミュージシャンでありながら、家庭では夫であり、2人の子供の父親。"パパは仕事を愛している" という一風変わったタイトルは、家族のために働く父親の姿を伝えようとしているようでもあり、一緒の時間を過ごせないことへの理解を求めようとしているようでもある。

バック・カヴァーではTシャツに作業ゴーグル姿で旋盤の火花を飛ばし、フロント・カヴァーではすすけた顔で笑顔を見せる。2年後に結婚生活が終わることを考えると、James Taylorの優しい笑顔の裏には繊細な悩みが隠れているのだろう。
James Taylor / Dad Loves His Work (バック・カヴァー)
と、想像を勝手に巡らせながら、おすすめの4曲を紹介。

1曲目の「Hard Times」は、Simonとのうまくいかない夫婦仲を歌った曲だろう。いつものように穏やかな曲調ながら、"つらい時もあった" とうちあける。息の合った演奏をするバック・ミュージシャンは、Waddy Wachtel/Dan Dugmore(g), Don Grolnick(k), Lee Sklar(b), Rick Marotta(ds)等。このうち、Wachtel, Dugmore, Marottaは、前の年にRoninというバンドを組んで唯一のアルバム『』を残している。美しいファルセットのバック・コーラスはDavid LasleyとArnold McCullerの二人。James Taylorと3人で "we've got to hold on" (がんばらなきゃ) のフレーズを繰り返すと、グッと来るものがある。

「Her Town Too / 憶い出の町」は、Taylor - J.D. Souther - Waddy Wachtelによる共作。彼が去って、家と庭とともに街に一人残された女性を歌った内容は、Simonとの関係の行く末を投影したようにも思える。この曲では、TaylorとSoutherが惚れ惚れするような優しいデュエットを聴かせる。感情を昂らせない穏やかなトーンは、曲に描かれる二人の微妙な心の距離を表しているようで、ため息が出るように切ない。この曲は全米チャートの11位を記録。中山美穂と織田裕二主演の91年の邦画『波の数だけ抱きしめて』でも、この曲が印象的に使われている。

I Will Follow」は柔らかい陽だまりのような癒しの歌。エレピとアコギの優しい響きに包まれた「Believe It or Not」の美しさも格別だ。

James Taylorはマサチューセッツ州ボストン生まれだが、意外なことにデビューはThe Beatlesの設立した英アップル・レコードからになる。「London Town」はその頃を思い出しつつ、"もしロックン・ロールについていけなくなり、情熱が燃え尽きてしまっても、自分が歌にしたようなことを考えていられると信じたい" と歌っている。

ここからアカペラで歌われる「That Lonesome Road」は、"この孤独な道をひとりで歩いていこう" という凛々しい決意表明になっている。James TaylorはCarly Simonとの結婚生活の間に7枚のスタジオ・アルバムを残しているが、本作はSimonの助けなしに(ひとりで)制作した唯一のアルバムになった。この曲の女性ヴォーカルはJennifer Warnesが担当している。

一方のCarly Simonは、同じ年に『』を発表。スタンダード・ナンバーからトーチ・ソング(片思いや失恋を題材とした歌)ばかりを集めた内容で、ジャケットも痛々しい。SimonはTaylorとの結婚生活の間に8枚のスタジオ・アルバムを残しているが、これがTaylorの参加しない唯一のアルバムになった。ちなみに、竹内まりやの「元気を出して」(84年)は、Carly Simonの痛々しい様子を見て、彼女を励ましたいという思いから生まれた曲らしい。

●収録曲
1. Hard Times - 3:12
2. Her Town Too / 憶い出の町 - 4:34
3. Hour That the Morning Comes - 2:54
4. I Will Follow - 4:14
5. Believe It or Not - 3:52
6. Stand and Fight - 3:10
7. Only for Me - 4:55
8. Summer's Here - 2:43
9. Sugar Trade - 2:48
10. London Town - 3:53
11. That Lonesome Road - 2:23


◆プロデュース: Peter Asher(per)

◆参加ミュージシャン: James Taylor(vo, ag, harmonica), J.D. Souther(vo), Waddy Wachtel/Dan Dugmore(g), Don Grolnick(k), Bill Cuomo(sy), Lee Sklar(b), Rick Marotta(ds, per), David Lasley/Arnold McCuller(bv), etc


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この記事を書いた人: Warm Breeze
70年代、80年代の洋楽やAORを中心に、心の栄養と生活の潤いを与えてくれる素敵な音楽を紹介します。どちらかというと埋もれている名作を紹介したいという気持ちが強いです。

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