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Warm Breeze

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Scott Jarrett / Without Rhyme Or Reason (1980年) - アルバム・レビュー

2020年05月31日
AOR名盤(1980年) 2
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Scott Jarrettの1980年のアルバム『Without Rhyme Or Reason』の紹介です。
Scott Jarrett / Without Rhyme Or Reason (1980年)
Scott Jarrettは、著名なジャズ・ピアニストであるKeith Jarrettの弟。男ばかりの5人兄弟で、上の3人が音楽の道に進んでいる。長男のKeithと次男のChrisはピアニスト。そして三男のScottはシンガー・ソングライターだ。

この『Without Rhyme Or Reason』は、Scott Jarrettのファースト・アルバム。Dave GrusinとLarry Rosenが1976年に立ち上げたフュージョン系の音楽プロダクションであるGRPレコードから発売され、GrusinとRosenがプロデュースを手がけている。ちなみに、GRPは "Grusin/Rosen Productions" の略。

バック・ミュージシャンは、Marcus Miller/Eddie Gomez(b), Chris Parker/Buddy Williams(ds), Ralph MacDonald(per)など、精鋭のジャズ・プレイヤーたち。ジャケットから想像できるように、Scott Jarrettはアコースティック・ギターを担当しており、かなりの腕前だ。また、兄のKeithも2曲(3, 9)のセッションに参加し、アコースティック・ピアノを弾いている。

収録曲はみなScott Jarrettのオリジナルで、タイトル曲の「Without Rhyme Or Reason」だけは友人のFrank Coppolaとの共作。Scottの歌声はJames Taylorのようなナチュラルなスタイルで、バック・ヴォーカルも自ら手がけている。

ここから、おすすめの5曲を紹介。

まずは、1曲目の「Miles Of Sea」。静かな美しい曲で、澄んだメロディに心を洗われる。"美しい歌を君に贈ったら まだ一緒に歌ってくれる? / 僕がどこにいたかを話したら 僕の見てきたものを見てくれる? / 僕は自分の中の海を ずっと旅してきたんだ / 君に 僕の一部になって欲しい" と歌う内容はどこか情熱的で、Scott Jarrettの繊細な歌声にも芯の強さのようなものがある。

2曲目の「I Was A Fool」では、Marcus Millerのスラップ・ベースとBuddy Williamsのドラムスが生み出す弾力のあるリズムが気持ちいい。陽気なハーモニカはToots Thielemansだ。ドラムスに関しては、1曲目のようなバラード系をChris Parkerが、ノリのいい曲をBuddy Williamsが担当し、それぞれの良さを発揮している。

3曲目の「Never My Fault」では、兄のKeithがアコースティック・ピアノで伴奏する。繊細ながら自由奔放ないつもタッチで、終始何かをつぶやくように弟の歌声に優しく寄り添う。"憶えてる? 僕らが小さかった頃、君はいつも僕のことを臆病って言ってたね" という詞は二人のことを歌っているのだろうか? 静かに流れ出すストリングスも柔らかく、すべてが感動的に優しい曲だ。ラストの「Pictures」でも兄の美しいピアノの伴奏を聴くことができる。

タイトル曲の「Without Rhyme Or Reason」は演奏面のハイライト。Dave Grusinの弾く幻想的なシンセの音で曲が始まると、すぐにサンバのようなリズムに乗ったアンサンブルへと移行する。Scott Jarrettもアコースティック・ギターの腕前を存分に披露し、聴きごたえがある。

「The Image Of You」は極上のメロウ。レアな本作が金澤寿和氏の著書『AOR Light Mellow』に取り上げられたのは、この1曲があったからかも。アコースティック・ギターのソロも素晴らしく、地味ながらとても滋養のあるナンバーだ。この曲は「I Was A Fool」とのカップリングで本作からのセカンド・シングルになっている。ファースト・シングルは「Miles Of Sea」。

この後の活動に関する情報はほとんど分からないが、2000年以降に何枚かのアルバムを残している。分かっている範囲では、2005年に『』を、2009年に『』を発表。また、2004年にはAlan Ross, Scott Jarrett, Garrett Randolphによる "SPACE" というグループ名義で『』というアルバムを残しており、本作の「Doctor / Nurse」と「Miles Of Sea」がカヴァーされている。

●収録曲
1. Miles Of Sea - 4:00
2. I Was A Fool - 3:41
3. Never My Fault - 4:12
4. Without Rhyme Or Reason - 3:45
5. On Looking Back - 2:37
6. Doctor / Nurse - 4:04
7. Lady - 3:14
8. The Image Of You - 5:00
9. Pictures - 4:36


◆プロデュース: Dave Grusin(k, per, ar), Larry Rosen

◆参加ミュージシャン: Scott Jarrett(vo, ag), Keith Jarrett(p), Marcus Miller/Eddie Gomez(b), Chris Parker/Buddy Williams(ds), Ralph MacDonald(per), Toots Thielemans(harmonica)


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Warm Breeze
この記事を書いた人: Warm Breeze
70年代、80年代の洋楽やAORを中心に、心の栄養と生活の潤いを与えてくれる素敵な音楽を紹介します。どちらかというと埋もれている名作を紹介したいという気持ちが強いです。

コメント2件

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HY

はじめまして

いつも楽しく拝見していています。
このCDずっと探していて最近入手しました。(プチ・プレミア価格でした。Amazonほどではないけど)これ一枚で終了したのはもったいなかったです。しかし、Michael JohnsonもCDの価格すごいですね。(この2in 1は、二枚とも発売時に買いました。)AOR系アルバムの再発もっとやってほしいですね。

2016年12月20日 (火) 19:19

Warm Breeze

Re: はじめまして

コメントありがとうございます。こちらこそ、はじめまして。

Scott Jarrettのこのアルバム、内容がとても良いだけに流通量が少ないのは残念ですね。私は幸運にも店頭で買うことができました。2000年の頃だったと思います。
逆にMichael Johnsonの方は、2in1のCDを少々高い価格でしたが気合いを入れて(?)買いました。

今年は久し振りにAOR系のCD再発が賑わいましたが、この賑わいがもうしばらく続くといいなぁと期待してます。

2016年12月20日 (火) 21:11