本作の収録曲は9曲。AOR的な視点では、「On The Boulevard」(Marc Jordan作詞、Jay Graydon, Richard Page作曲)、「Spies In The Night」(Alan Paul作詞、Alan, David Foster, Graydon作曲)、「Smile Again」(Alan作詞、Bill Champlin, Foster, Graydon作曲)、「Kafka」(Bernard Kafka作詞、Graydon作曲)の4曲に目が行く。
「On The Boulevard」は、作詞・作曲の豪華なクレジットから抱く期待を裏切らない、クールで洗練度の高いナンバー。Steve Gaddのシャープなドラムスの上をGraydonが華やかなギター・ソロを披露するあたりは、まさにAOR好きのツボ。
「Spies In The Night」は、「ジェームス・ボンドのテーマ」を取り入れた異色の曲。前作にもテレビ番組『The Twilight Zone』のテーマ曲をアレンジした「Twilight Zone/Twilight Tone」という曲があったが、それと同じ路線。
「Smile Again」は、「After the Love Has Gone」の黄金トリオによる甘美なバラード。ロマンティックな曲調やアレンジは、まさに「After the Love Has Gone」を思わせる。
「Kafka」は、彼らの複雑かつ高度なヴォーカリーズにSteve Gaddの手数の多いドラムスがスリリングに絡む圧巻のナンバー。後に続くしっとりしたアカペラ・ナンバー「A Nightingale Sang In Berkeley Square」とのコントラストが効いており、動と静、両方の美しさに言葉を失う。
本作からはドゥーワップ調の「The Boy from New York City」がBillboard Hot 100チャートの7位となる大ヒットを記録。彼ら唯一のTop10ヒットとなっている。また、アルバムもBillboard 200チャートの22位を記録し、彼らのアルバムの中で最高位となった。
Jay Graydonのプロデュース作はアレンジがとても洗練されているので、サウンドの美しさにアーティストの個性が見劣りしてしまうことがあるかも知れない。だが、The Manhattan Transferの場合はヴォーカルの技量・個性が突出しており、プロデューサーとアーティスト双方の力量が素晴らしい相乗効果を生んでいる。
●収録曲
1. On The Boulevard - 4:09 2. Boy From New York City - 3:40 3. (Wanted) Dead Or Alive / おたずね者 - 3:26 4. Spies In The Night - 3:59 5. Smile Again - 4:34 6. Until I Met You (Corner Pocket) - 5:18 7. (The Word Of) Confirmation - 3:15 8. Kafka - 4:08 9. A Nightingale Sang In Berkeley Square - 3:48
◆プロデュース: Jay Graydon(ar, g, k)
◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Dean Parks(g), David Foster/Victor Feldman/Steve George/Greg Mathieson(k), Abraham Laboriel(b), Steve Gadd/Mike Baird(ds), Andy Narell(per), Richie Cole/Tom Scott(sax), Jon Hendricks(scat), etc