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Warm Breeze

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Boz Scaggs / Silk Degrees (1976年) - アルバム・レビュー

2020年05月04日
AOR名盤(1974~1976年) 8
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Boz Scaggsの1976年のアルバム『Silk Degrees』の紹介です。
Boz Scaggs / Silk Degrees (1976年)
Boz Scaggsは今やアメリカのブルー・アイド・ソウル~Adult Contemporaryシーンを代表するミュージシャンの一人。デビューしたのは1965年で、Bozが21歳のとき。オハイオ州生まれの南部育ちだが、R&Bが盛り上がっていたロンドンに渡り、意外なことにスウェーデンのレーベルからデビュー・アルバムの『』を発表している。スウェーデンは祖父母の生まれ故郷らしい。

『Boz』にはオリジナル曲はなく、私は未聴だが、フォーク・ブルースのスタンダード・ナンバーをアコギとハーモニカの弾き語りで歌っているようだ。Boz Scaggsの音楽のルーツはブルースにある。

アメリカに戻ったBozは、学生時代の旧友だったSteve Millerのバンド(Steve Miller Band)に参加し、最初の2枚のアルバム(『Children of the Future』と『Sailor』。いずれも68年発表)でギターとヴォーカルを担当している。その後はソロ・アーティストとして、R&Bに根差しながら音楽のスタイルを次第に洗練させていく。

この『Silk Degrees』はBoz Scaggsの代表作に挙げられることの多いアルバム。特にAOR人気の高い日本においては、AOR屈指の名盤として揺るぎない地位を築いている。本作の発売40周年にあたる2016年には、ソニー・ミュージックから「ソニー AOR誕生40周年記念 AOR CITY 1000」と題したシリーズまで企画され、100タイトルのCDが発売された。

10曲の収録曲はソウル、ファンク、ポップ、ロック、レゲエ、バラードとバラエティに富み、ヒット・ポテンシャルの高いキャッチーな曲が多い。翌年にTOTOを結成するDavid Paich(k), Jeff Porcaro(ds), David Hungate(b)の若々しい演奏に支えられ、Bozの歌声もその滑らかさと艶っぽさを増している。写真家のMoshe Brakha(モシャ・ブラカ)の撮影したフロント・カヴァーから漂う大人の色気にも目を奪われる。

プロデュースを担当したのはJoe Wissert。曲作りにはDavid Paichが大きく貢献し、5曲(1, 3, 6, 7, 9)をBozと共作したほか、レゲエ調の「Love Me Tomorrow」を提供。残りはバラードを中心にBozの自作が3曲(2, 5, 10)。また、Allen Toussaintの75年のアルバム『』から「What Do You Want The Girl Tod Do / あの娘に何をさせたいんだ」をカヴァーしている。ニューオーリンズのR&Bシーンで活躍したAllen Toussaint(トゥーサン)はBozのお気に入りのピアニスト。Toussaintの曲をカヴァーするのはこれで4曲目になる。

それでは、おすすめの曲を紹介。

まずはヒット曲から。本作からは「Lowdown」が全米チャートの3位、「Lido Shuffle」が11位になるヒットを記録した。ファンキー&メロウなディスコ調の「Lowdown」は、キャリア初かつ唯一のトップ10ヒット曲。ここでは、Paich - Porcaro - HungateのTOTO組に加えて、Louie Sheltonのギターがいい音を出している。Jeff Porcaroらしい軽やかなシャッフルで始まる「Lido Shuffle」もファンキーなナンバーだ。後半ではホーン・セクションやPaichの弾くムーグ・シンセサイザーが加わって、華やかに盛り上がる。

What Can I Say / 何て言えばいいんだろう」と「Georgia」はソウル~R&Bベースのポップなナンバー。どこか懐かしさのある「What Can I Say」はサード・シングルになり、チャートの42位をマーク。続く「Georgia」は気持ちのいい高揚感のあるナンバーで、"Georgia, I swear I never seen such a smile" というフレーズで始まる歌詞はとても情熱的でロマンティック。

「Jump Street」は、Les Dudekのスライド・ギターをフィーチャしたロック・ナンバー。Les Dudekは2年前からBozのバック・バンドの一員として活躍している24歳のギタリストだ。Duane Allman率いるThe Allman Brothers Bandのアルバムでギターを弾いたこともあり、24歳で夭逝したDuane Allmanに風貌がそっくり。Bozはその才能を見込んで、『Silk Degrees』と同じ年に発表されたLes Dudekのデビュー・アルバム『Les Dudek』のプロデュースを引き受けている。

レコードで言うA面、B面の終わりにはBoz Scaggsを代表する美しいバラードが1曲ずつ収められた。

静かなイントロから "Son of a Tokyo rose" のフレーズで始まる「Harbor Lights / 港の灯」は穏やかな郷愁を漂わせるナンバー。きらきらとしたエレピの音が夜の港の水面に煌めく灯のようだ。

一方の「We're All Alone / 二人だけ」はバラードのスタンダードとも言える有名曲。Bozはこの美しいメロディを高めのキーでしなやかに、力強く歌う。ゴージャスなストリングスにひとしきり包まれた後の最後のフレーズ "All's forgotten now, my love." を歌う声の熱さとひたむきさに胸を打たれる。

BS-TBSの洋楽番組『Song To Soul』でこの曲を取りあげたことがあり、Boz Scaggs本人が美しい歌詞にまつわる秘話を語っていた。私的な曲であることと、詞を書けずに苦労したが、レコーディングのマイクに向かった時に言葉が溢れ出てきたことを語っていて、感動した憶えがある。

このアルバムは全米チャートの2位を記録。76年のグラミー賞では「Lowdown」がBest R&B Songに輝いた。AORの代表作は他にもあるだろうが、Boz Scaggsの代表作を問われたらこのアルバムを答えるだろう。

●収録曲
1. What Can I Say / 何て言えばいいんだろう - 3:01
2. Georgia - 3:57
3. Jump Street - 5:14
4. What Do You Want The Girl To Do / あの娘に何をさせたいんだ - 3:53
5. Harbor Lights / 港の灯 - 5:58
6. Lowdown - 5:18
7. It's Over / すべては終わり - 2:52
8. Love Me Tomorrow / 明日に愛して - 3:17
9. Lido Shuffle - 3:44
10. We're All Alone / 二人だけ - 4:14


◆プロデュース: Joe Wissert

◆参加ミュージシャン: David Paich(k, ar), Louie Shelton/Fred Tackett/Les Dudek(g), David Hungate(b), Jeff Porcaro(ds), Tom Scott(sax), Joe Porcaro(per), etc


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Warm Breeze
この記事を書いた人: Warm Breeze
70年代、80年代の洋楽やAORを中心に、心の栄養と生活の潤いを与えてくれる素敵な音楽を紹介します。どちらかというと埋もれている名作を紹介したいという気持ちが強いです。

コメント8件

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犬のポチくん。

私が勝手にボスのAOR3部作

「シルクディグリース」「ダウントゥゼンレフト」「ミドルマン」
が、私のボズにおけるAOR3部作です。
ボズによると、「ヨットロックは嫌いだった」と、後々言っているようですが、
そうとは思えない完璧な仕上がり。
バックメンバーの後のTOTOとなるメンバーの演奏力良かった。
このアルバムが、3作の中で一番ブルージーですね。
この後、ポップ化して行くけど、根底にあるブルースは忘れていないと思います。

2020年05月04日 (月) 11:22
Warm Breeze

Warm Breeze

Re: 私が勝手にボスのAOR3部作

コメントありがとうございます。

「シルクディグリース」「ダウントゥゼンレフト」「ミドルマン」は、まさにAORの3部作ですね。
自分のルーツに回帰した近年の3部作『Memphis』(2013年),『A Fool to Care』(2015年),『Out of the Blues』(2018年)を聴くと、"ヨットロックは嫌いだった" というコメントも頷けるような気がします。どちらのBozも素敵ですね。

2020年05月04日 (月) 12:33

ギターマジシャン

ボズ・スキャッグス

銀座ナウの洋楽コーナーで、トップ10の曲を日本のバンドが生演奏していて、そこで「ハード・タイムス」を聴いて、ボズ・スキャッグスを知ったので、名盤「シルク・ディグリーズ」は後追いでして、ボズの「二人だけ」より先にリタ・クーリッジ「みんな一人ぼっち」を聴いていたような気もします。

後にTOTOとなるメンバーの参加もすごいですし、ルイ・シェルトンのギターも見事で、もっと活躍してほしかったギタリストです。

このアルバムがAORの誕生かは諸説あるでしょうが、ソニーのキャンペーンは名盤が安く購入できて、すごく良かったです。

2020年05月05日 (火) 11:30
Warm Breeze

Warm Breeze

Re: ボズ・スキャッグス

ギターマジシャンさん、コメントありがとうございます。

「We're All Alone」は "二人だけ" とも "みんな一人ぼっち" とも取れますね。解釈を委ねているところも魅力です。私も最初は "みんな一人ぼっち" の意味に捉えていましたが、今は "二人だけ" の意味に捉えています。ソニーのキャンペーンでは、私も世界初CD化や日本初CD化を中心に購入してとても重宝しました。

2020年05月05日 (火) 18:59

Rooster.Cogburn

私は、Down to then leftが一番好きです。理由はリアルタイムでLPを購入して聴いていたからが理由です。Silk Degreesのヒット曲ならリアルタイムですが、アルバム全曲となると後追いになります。

アレンジャーが、マイケル・オマーティアンになって、随分イメージが変わったからか、世の中、We are all aloneのようなバラードを引き続き求めていたからなのか、Down to then leftは前作ほどヒットしなかった気がします。

因みにEarth, wind & fireの、I am~Faces~Rise!の三作から一枚選ぶと、やはり間に挟まれたFacesを選びます。

ただ、変わってるだけかも。

2020年05月06日 (水) 19:46
Warm Breeze

Warm Breeze

Re: タイトルなし

Rooster.Cogburnさん、コメントありがとうございます。

リアルタイムで聴いていたアルバムって、スペシャルになりますよね。EW&FのI am~Faces~Rise!の三作から一枚選ぶとしたら、私はリアルタイムに聴いていた『Raise!』かな~。

『Down Two Then Left』はソウル、ファンク路線に方向性が絞られている感じがしますね。「Hard Times」の濃厚なサウンドがお気に入りです。

2020年05月07日 (木) 07:11

Rooster.Cogburn

Warm Breezeさん、こんにちは。

リアルタイム聴取は重要ですよね。私もほんと暇さえあれば聴いてましたから。ただ、今みたいに移動中に音楽が聴ける時代ではないので、その刷り込みの影響は計り知れずです。

私が聴き始めた頃の洋楽は、ロックならベイ・シティ・ローラーズが少し落ち着いて、キッス・クイーン・エアロスミスが人気を得ようとしていた頃、また、権利が煩い現在では信じられない光景だが、ホテル・カリフォルニアが街の何処へ行っても流れていた。ポップスではアバが台頭し始めた時期で、最初の洋楽としてビートルズの薫陶を受けた友人もたくさんいる。そういう時代です。そんな中でボズを好んで聴く中学生はほぼいません。兄姉がいる洋楽好きの友人の中に少しわかる人がいる程度だから、Hard Timesを聴いて喜ぶ中学生なんて、間違いなく異端です。

私だって当初、Raise!は大好きだったんですよ。特にA面(Evolution Orangeのアレンジが格好良すぎ)。それに引換えFacesはヒット曲がないし、ダブル・アルバム(2枚組)のため割高で、発売当時は自分も含めて友人の誰も買わなかった。でも、大人になって中古LPでようやく全曲を聴いて、CDは2回買い直しました。その買い直し2回目のCDを聴いて目からウロコです。そのCDは2010年発売の輸入盤で、それまで発売されていたどれよりも音圧が高く、リマスターの効果で音の分離もよく別作品のように聞こえました。I amとRaise!という大ヒット作に挟まれてしまったが故に先入観で聴かれている方が多いかも。あまり両作品に拘らずポップスとして聴くならかなりレベルの高い作品かと思います。また、EWFの黄金期メンバーであるアル・マッケイ(ギター)のカッティングが聴ける最後の作品としても重要(スティーブ・ルカサーがどんなに弾きまくっても、このカッティングには適わない)で、これがこの作品に一本筋を通しているようで心地良いです。私のFaces押しはここからで、いつか再評価されることを願ってます。

2020年05月07日 (木) 15:40
Warm Breeze

Warm Breeze

Re: タイトルなし

Rooster.Cogburnさん、こんにちは

『Faces』への想い、熱いですね~(笑)。私もCDを持っていますが、『Original Album Classics』という5CDのCDセットの1枚として持っています。簡素な紙ジャケにCDのみを収めたとてもコンパクトなCDセットなので、省スペース化にはとても重宝します。

『Faces』はアル・マッケイが参加した最後の作品なんですね。再認識しました。クレジットを見たら、ルカサーも確かに2曲でゲスト参加してますね。

2020年05月08日 (金) 19:27